@感謝祭のうたゲー@
| 毎年楽し過ぎた夏が過ぎ9月の新学期が始まるとすこしづつ秋の色が深まってくる。 |
| その辺りから年末にかけて割合続く行事や祝日ムードにテレビのコマーシャル |
| をはじめ全国的に浮き足だってくるのがこの国の生活の特徴でもある。 |
| そのうちの祝日の一つが感謝祭なんだな。 |
| 1620年にアメリカ大陸に渡ってきた移住者たちがその年の冬の厳しさに多くの |
| 同士を失いながらも次の年の春の豊作で生き延びることができた感謝のしるしに |
| 盛大な宴を開いたことからきているといわれている(ぎこちない解説だな・・)。 |
| ありとあらゆるご馳走を朝から用意し,とにかく食べて食べて食べまくるこの祝日 |
| は食い意地の張り倒している私には歴史のバックグラウンドなぞおかまいなし。 |
| 典型的なメイン料理はやはり七面鳥の丸焼きである。 |
| 87年の秋に一度初めてアメリカに行き奴の両親を訪ねたことがある。 |
| その時に今の義母が用意してくれたのが七面鳥ディナーだった。 |
| 感謝祭でないからといって季節はずれな料理ではなく普段でも多く人が集まれば |
| 結構役に立つメニューの一つとしてうけている。普通の人数でもサイズの小さい |
| 鳥(七面鳥)を使えばいいことである。義母はそうやって極小振りの胸の部分の |
| 固まりをローストしてくれグレービーソースと一緒にこれも必ずといっていいほど |
| ついてこなければおかしいマッシュドポテトと茹でた野菜(たいがいがブロッコリー |
| というひとだった)を私の目の前に『どうぞ召し上がれ』と置いてくれた。 |
| タレントの小堺さんがむかーし言っていたように子供の頃には世の中にこれほど |
| 美味しいものがあるのかという超うれしい思いをしたことがたくさんあったが, |
| 大人になって舌が肥えてくるとなかなかそういうものには出くわさなくなった。 |
| だが,まさに私はこの七面鳥料理でそのありがたい思いにありついたのだった。 |
| 最初の2年ほどは感謝祭のディナーといえば義兄の家へお招ばれでいったり, |
| 義兄の御嫁さんの実家へも招ばれていったこともあった。 |
| ベーカリーへ勤めだした年にそこでいろいろ仕入れた七面鳥の料理のコツなんか |
| 聞いていたりしてそろそろお招ばれも飽きてきたし自分で鳥さん焼いてみようかと |
| いうことになりこれまた入れ込むことの得意な自分である,すっかり躍起になった。 |
| 七面鳥の中に詰め込むスタフィング材料を安く買い込み,各種類のハーブを |
| ベーカリーから分けてもらって野菜は七面鳥のダシで煮込んだり,肉汁のグレービー |
| ソースは焼きあがった七面鳥の肉汁をたっぷりと入れてコクを出す。 |
| こうやって私の頭の中は初めて自分で仕切る奴と私だけの七面鳥ディナーのプラン |
| で一杯だった。 |
| デザートのパイ類はお好みのパイがベーカリーから従業員一人一人に一個づつ毎年 |
| 振る舞われる。まあ,昼間の従業員からすれば自分たちで余分に焼かされてるんだ |
| から振る舞いなんて気分じゃないだろうが。 |
| 11月の最終木曜日が感謝祭の日である。普通は金曜に休暇を取り4連休にすることが |
| 多いが私はそんな事の関係無いベーカリー勤めだったし,奴は無職状態だったから |
| ほとんどその日限りの祝日気分。それでも私は前日まで頭に描いた宴の展開図に |
| すっかりのぼせあがってしまっていたのだった。 |
| 当日の朝はこの辺りの秋の季節の典型か暗い曇り空に風がかなり強く吹き,ストームで |
| もやってきそうだったが休日に早く起きた試しがないのにわざわざ6時起きで冷蔵庫で |
| 4日も前から解凍してあった10ポンド(4`半くらいかな)の七面鳥を取り出して |
| 下ごしらえにかかった。バターと生のにんにくのおろしたもの,各ハーブを表面に |
| 塗り付けて,セロリやソテーしたマッシュルームなんかの入ったスタフィングを中に |
| 詰め込む。ネックやレバー,砂肝などの部分はスープだしに使う。鳥さえオーブンに |
| 入れてしまえばあとは4時間からかかる焼き時間のために,ゆっくり添え膳の調理 |
| にかかればいい。このままいくと2時くらいにはジューシーな七面鳥にかぶりつける |
| 手はずだ,ぐふふ♪ |
| 2時間経ってオーブンの中の七面鳥をチェックして受け皿に熱くにじみ出ている肉汁を |
| まんべんなく鳥の上にからめるようにかけていく。 |
| このために朝から絶食していた私が,よーしと笑みを隠し切れず揉み手揉み手で |
| オーブンのドアを閉めたその途端・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ |
| ぐおーーーーーぉぉん!! |
| という物凄いなにかの唸るような音と共にトレーラー中の電気類が全部切れてしまった |
| ではないか!て,停電であるぅーーーーっ!! |
| おーい!!どうなってるんだよ!!!オーブンには鳥さんが日焼け中なんだぁ!!!! |
| この時期によくやってくる強風のストームでそこら中の木が電線の上になぎ倒された |
| らしい。生ものは言うまでもなく調理済みや調理中の食べ物も2時間以上室温に放置 |
| しておくのはいけないらしい・・・。望み薄とはわかっていてもはよ電気ついてくれと |
| も・イライラしながら待つこと4時間!やっと回復した電力だが,七面鳥の中身の |
| スタフィングは完全にパァ・・・。それでもテレビをつけると鳥はなんとかもつと |
| ニュースでやっていた。けっこう広範囲で停電だったから地元のテレビ局もこういう |
| 情報を流していたのだろう。電気が止まると水道もでなくなる我が家では停電の間中 |
| なにもできなかった状態だったので,電力の回復した夕方の5時くらいから生焼けの |
| まますっかり冷えた七面鳥を中身もそのままにまた焼きはじめ,ポテトやなんやら |
| 添え膳をつくり,できあがったのは夜の7時半を過ぎていた・・・。 |
| テレビもなにも一番いいところは停電で観れずじまいであった。 |
| 七面鳥の食事のためにスナックすら買い込んでいなかった奴と私は夕方から早終い |
| したスーパーにも行けず,空腹のあまり当時飼っていたネコが何カロリーあるか |
| 思わず考えてしまったほどである。 |
| こうやって物事に期待をかけてしまったあげくに痛い目をみる私のこの悪い癖は |
| 今も・・・まったく治っていない。要領の悪さが期待外れを招くのかね〜・・・・・(苦笑)。 |