おかえり、シュワンセィ

まず、思うのが
『ん?シュワンセィ?』だろう。
 
無理も無い。
 
どこの辞書にも載ってないハズ、長女の造語である。
しかしこれ、彼女のかけがえのない大切なものだ。
 
我が家は夫婦のベッドに子供用のベッドをくっつけて
ファミリーベッドということで家族一緒に寝てしまっている。
数ヶ月前ベッドを寝室内で移動させたので長女の子供用ベッドの
枕元がちょうど窓の下にくるようになったのだが、
子供心にこれが気になり始めたらしい。
そこで考え付いたのだろうか、自分の選択眼にかなった玩具や
ぬいぐるみ、小物キャラ人形などをドッサリ窓際に並べて置くように
なったのである。その数も何個ある?数え切れないほどワンサカ
窓際にのっけられている。
その彼女、かなりこの自分の守り神のような飾り物に神経を
尖らせていて、妹や私達が触って落とそうものならもう、それはそれは
お怒りになる。気難しいアーティストじゃないんだから。
それにこのお飾り物なるもの、彼女なりに繊細かつ厳しい基準が
あるらしいのがこの数ヶ月でわかってきた。
私達からみればゴミのようなものにしか見えない
ものでも他の立派なおもちゃそっちのけで窓際を賑々しく堂々と飾って
いたりするのである。並べ方や、どの玩具、どのゴミとちゃんと彼女に
よって選りすぐられたものでないと『シュワンセィ』に仲間入りできない。
そう、『シュワンセィ』である。『フィアンセ』の英語の抑揚と同じ。
そうやって彼女は名前をつけた。
なぜシュワンセィ?日本でも流行ったらしい『風水』をご存知と思う。
その英語読みが『ファング・シュエィ』(どうしてもスペルがわからん)
奴の勤める会社がこの『ファング・シュエイ』に凝っている事もあって
かなり会話に出てきていた。『ファング・シュエイ』と正確に思い出せ
なかった長女の命名が『シュワンセィ』だったのだ。
 
長女の入れ込みようもあって数ヶ月させるようにさせてきた。
しかし、次女だって玩具を『シュワンセィ』に奪われてしまうのは
面白くない、ちょくちょくいじっては長女と喧嘩、というパターンに
私を閉口させていたのだ・・・・。
 
そして夏休みもあと2週間というころか、私がキレた。
あまりにも『シュアンセィ』を巡る醜い大喧嘩が激しいので
その日、それ以上に増して長女が一線を超えて怒り暴れまくった
ので『シュワンセィ、もうおしまい!』と全部片付けてやった。
想像を絶する状態で泣き喚く長女、『もう泣かないから、
もう妹とシェアするから、そのまま置いといて』と泣き叫ぶ
(もう泣かない、って泣いてるジャーン、と意地悪)のを
尻目にキッチリ片付けた。もう限界。いくら母親でももう限界。
とにかく窓際を掃除してすっかりきれいにしたのだが。。。
 
なんだかその辺りが嫌に寒空しい。
うーん、すっかり調教されちゃったか。
魔術に絡められたのは親の私なのね。
数時間経ってまたぞろシュワンセイ再現にとりかかる。
夏、終わり近しの大騒動でござった。

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