@事件その3@
いろいろ指紋を採取したりするのに『営業が・・』と心配のオーナー |
旦那を尻目に2度3度の事情聴取に了解していった私。 |
やっとこさパンを全部包装し終えたのが予定の4時間遅れだった。 |
それから聞いたところによると,犯人が持ち去ったキャッシュレジスター |
は店から少し離れたところで無残なバラバラスクラップになって発見 |
されたとのこと。はっきりいって,田舎のパン屋に忍び込んでも |
そんなに収穫あるわけないんだよね。レジになんて小銭しか入ってない |
って・・・・。少しでもまとまったお金は全部キッチンの(厨房とは別) |
スパイス入れの引き出しの中よ・・・。銀行しらんのかぁ・・? |
ま,日頃からあまりまとまったお金は店に流してないからそんなの |
盗んでもカスみたいなものだが・・。100ドルないもん・・。 |
警官の人の予想では『クスリ買うお金欲しさか,どっちにしてもちんけな |
部類の犯罪』だそう。そういやなんか若い男だったもんね。 |
一応目撃者なんだった・・。 |
指紋も採り終えなにもかも片付いたのが昼過ぎ。すっかりランチタイム |
過ぎてる。8時半から順々に出勤してくる女の子たちもこの様子に |
井戸端の話題が絶えない。『ね,ね,ゆかいたの?押し入りの時?』 |
にはじまって『ひゃあ!すごいじゃん!』『飛び蹴り食らわしゃいいんよ』 |
とすっかりテレビ化してしまっている。自分のことじゃないと思って,も〜 |
のんきなんだから。だぁれも心配してくれないのね・・・。 |
こっちは結構ビビってしまっているよ。当たり前だっちゅーの。 |
運悪くその夜(金曜だった)真夜中から新しく引き受けていた土曜の |
分のパンとお菓子作りのシフトがあったのだ。 |
私の頭の中はその真夜中シフトをどのように切り抜けるかでもう一杯 |
だった。すっかり恐怖心に征服されてしまい夜中にあの建物に一人で |
いられない・・・。電気も白熱灯の暗いのだし。 |
しかし,周りにはそれが伝わらない。実際自分に起こっていないから |
なんだろうが,『大丈夫よ同じこと2かいもあるわけないし』 |
そんなもん分かっとるわい。 |
頭脳で考えること以前の問題なのだよね。経験がかたる恐怖よ恐怖。 |
『あ,それじゃデーブに付き添ってもらえばいいんじゃ?』と |
店の女の子の一人が提案。お,もしかしていい考えか? |
甘かった |
すっかり忘れていたが,奴も全然有り難味のない周りの一人だった。 |
『もう大丈夫や』的な私のもつ恐怖心とは関係の無い理屈で説得 |
しにかかる。貴様仕事辞めてんのにいいじゃんか,それくらいよ。 |
『なぁ〜に言ってるぅ〜!いろいろやること有るぞ』 |
ええい。役立たずめ〜。 |
それでもなんとかその夜は切り抜けた!しかし子供がおばけ屋敷でバイト |
するくらいのマグニチュードでこわかった・・・。あれはおそらく今までの |
人生のなかで一番恐かった経験かも。実際の押し入りより恐かったか? |
とにかくあの押し入り以来すっかりベーカリーの夜勤に怖じ気づいて |
しまった私。しかし生活のためじゃ,と頑張った。ペットの犬もお供に |
連れて働いた。奴にも何度か脅迫してお供させた。それでも大抵はひとり。 |
夜勤の回数も週にどんどん増えていった。夜勤は時給がいいのだ。 |
そうして何年か働いたがとうとう私のベーカリー夜勤恐怖症は治ることなく |
嫌気がさして昼勤に変更することにした。 |
犯人はその後まもなくして逮捕されました。 |