@事件その1@
| ベーカリーの仕事にもようやく慣れてきた。 |
| なにせ週3日というローペースだったし,ベーカリーは7時から開店 |
| といっても朝のバカ早いお客のためなら5時半6時にだって店を開ける |
| タイプのオーナーの方針だったのでたまにチラリホラリ接客することがあった |
| とはいえそんな難しいことやるわけないし,超楽チンで勤めていた。 |
| 最初にもらったお給料は安時給のうえ,半端な時期に勤めだしたので |
| なんと151ドル・・・。小2の気分だった・・。時給5ドルじゃ無理ないわな。 |
| それでも初めて外国で働いた末に手にした小切手・・・。 |
| なんか感涙の面持ちでじっと眺めたものである。 |
| 奴が『ほいほい,どれだけ稼いだんや』と覗きに来る。 |
| そして発した一言が・・ |
| 『なんじゃぁ?たぁぁったこれだけかい?』 |
| であった。おおおおおおおおおおおおおお・・・・・ |
| 貴様のと似たようなものよ。 |
| そんなこんなで半年が過ぎた。 |
| いつも通りベーカリーに4時過ぎに着き(ちょい遅刻なんだが^^), |
| 一番冷めたパンから順にラベルを入れ包装していきほっと一息ついた |
| のが5時半頃だったか・・。そうだ一服しようと厨房の勝手口に出て |
| タバコ(スモーカーだった)をプカプカ吹かしていたところなんか表の |
| ほうのドアノブのガチャガチャいうような気配がしたので勝手口の外側から |
| ガラス張りになっている店の中を通して表のドアのほうを覗いて |
| みたが暗くてよくみえない。でもなんか人がいるみたいだ・・影が動いたように |
| 見えたし。今度は背丈まで見えた。なんか勝手口のほうに回ってきそう |
| だったのでお客かなぁ・・?なんて軽い気持ちでタバコを消し厨房にもどって |
| 今度は中から店内表の様子を伺ってみたが店のドアの外には誰もいない。 |
| しかしどうもドアがガチャガチャいうような気がしてならないのだ。 |
| 耳をすませど厨房の大型冷凍庫のモーターの唸る音がうるさくてよく |
| 聞こえない。お客だなやっぱりと思い店内まで行ってドアを開ける前に |
| グッと背を伸ばしてもう一度自分のいる位置から表の店内の様子を |
| 伺ったその時である。 |
| ばったーーーーーん!! |
| 物凄い衝撃音がして次の瞬間店のドアが凄い勢いで弾かれたではないか!! |
| 疑う余地も無く誰かが蹴破ってきたのである。 |
| 人間こういった窮地に立たされると,いちいち脳髄で事情処理など |
| しないらしいというのが私の後になっての感想だが, |
| 『ご,強盗じゃぁぁあ』という言葉が頭中で閃光のようにフラッシュしたやいなや |
| がばと |
| 厨房の大まな板の陰に伏せて素早く身を隠し軍兵よろしく這いつくばって |
| 数メートル先の勝手口までたどり着き後は飲みかけのコーラや自分の |
| ジャケットなんぞほったらかしてスタコラさっさと車に乗り込み |
| タイヤのスキッド音も高らかに自宅へと飛ばしていたのだった。 つづく |