@ニホンって・・・?@
| ベーカリーに勤めだして一年たった年だから1991年ということになる。 |
| その年の年末に実家へ2年半振りに家族に会いに帰郷することになった。 |
| 両親も奴と私の極貧生活の現状は前の年に遊びに来た従兄弟から |
| 聞かされて知っていたので航空費は向こうでもってくれるという。 |
| そうでもなきゃ帰れるはずもない。暮れから正月は勿論,一月一杯は |
| 日本でゆっくりして2月の3日にこちらへ帰ってくる予定に喜んだのはいうまでも |
| ない。あれも食べてこれも食べて・・・と,また食い意地本意のリストを頭の中 |
| で作成しベーカリーのボスにも5週間日本に帰ることを告げた。 |
| ボスは聞くなり久し振りに家族に会ってゆっくりしてきなさいと快く承知してくれた。 |
| 私がいない間の仕事のほうは誰かに任せてくれるらしい。 |
| 5週間とはちょっと長すぎるような気もしたが前にも登場した変わり者の『ジョイス』 |
| がそれなら後任を勤めてくれると言い出した。反対されないんだからここはお言葉に |
| 甘えて長期休暇ということで日本で久し振りに家族や友達にあって楽しんでこよう。 |
| それから何日か経ったある日のことである。 |
| いつものようにベーカリーに朝4時半に出ていろいろ忙しく9時半くらいまで雑用 |
| なんかしながら朝のシフトの女の子達とおしゃべりしていたらボスの旦那の |
| 元『パンの配達の人(ありがとよー,ジョイス)』がやってきた。 |
| ありきたりの『あ,おはよー』の挨拶が終わっての雑談の最中にそのボス旦那, |
| 私に向かってニコニコ顔でこういうではないか。 |
| 『あ〜あ^^,そうなんだね〜・・^^。もうそろそろお家へ里帰りだったんだ〜^^。 |
| で,その準備しなきゃいけないんだったんだね〜^^。で,始めたわけだね?』 |
| ・・・・・??????・・・ |
| あ〜・・・・・?なんの意味なんだぁ〜・・・・・????なに言ってるんだろ? |
| ボーっと考えた私だったが・・・・・そこで,は!と思い当たった! |
| 彼は当時腰の辺りまであった私の髪のことをいっているのだった。 |
| 勤務中は邪魔になるからと無造作にくくり付けてあった前髪が偶然丸みをもって |
| 膨らんでいたのを『実家へ帰るための髪結いの準備』つまりはあの,あの |
| 時代劇のような日本髪に『戻す』準備を始めたとどうやら勘違いしたようなので |
| あるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!な,なんてこったい!(ドラマの日本語吹き替え風に) |
| で,思い出したのがこの国の人達って日本のことに対しては誠に無知であるという |
| ことだった。大体国民的に自分の国が一番であるというごく人間的な意識をサラリと |
| 着流すのがとても上手なアメリカ国民である,それが他国に関する知識の乏しさに |
| 如実に反映。しかもその状態になんの違和感も見せず手足を伸ばしてゆったりと |
| 寛いでいるのである。だからといって恥じないのも大半の人達の考えのようである。 |
| いまだに日本人は平安時代のような衣装をまとって生活しているとか |
| 発展途上国のひとつであるという一種の思い込みのようなものがかなりの割合で |
| 普及しているのである。ヒドイのになるとテレビや車は勿論電化製品のありとあらゆる |
| ものに私達日本人も入れてすなわちアジア人は馴染がないと末恐ろしい勘違いを |
| しているすげーの一言に尽きる人だってわたしが遭遇した中では少数ながらもいた |
| りした。隣のこれまたうちに負けないオンボロトレーラーの持ち主だったおばさんに |
| スーパーで偶然かち合った時に『あ〜ら,もうすっかりアメリカ人にみえるね〜♪』と |
| いわれたのもそうなると納得がいくのである。彼女は私がジーンズにシャツという |
| 洋服を着ていたことをいったのであろう・・・・・・・・・・・・。あ・の・ね〜・・・。 |
| 奴が面白いことをいった。 |
| ソニーや任天堂のファミコン,トヨタ・ホンダ・ニッサン・ミツビシからのハイテクの |
| 品々はへーきで使うくせにその発祥国日本を途上国だと信じて疑わないのは |
| 少数派であってもこの国の国民として恥だと。まさにイグノラントのお笑いの典型, |
| 愚の骨頂だと。少しでも自国一番の意識に溺れることから注意をそらせば簡単 |
| に察しのつくことであることはいうまでもない。ま,これが単なる無知の領域にとど |
| まっていてくれる間はまだマシかもしれないけれど。うぬぼれは恐いっすよ。 |
| というわけでこのエピソードはその年末に一時帰国したときも実妹と話しては |
| 大笑いしたものである。だが年数がたつにつれて上に述べたような経験をする |
| ことは全くなくなった。うーん,面白いネタにありつけなくなったのであるなぁ・・・。 |